芋文庫

推し本

生き方

当然の事ながら、人の数だけ生き方があり、才能やその人の生きた場所、時代にも影響されて、それぞれの人生は形づくられます。

 

THE SAPEUR  茶野邦雄(1959~ )

世界最貧民国のひとつ、コンゴ共和国

そこに、高級ブランドに身を包み、街を闊歩する人々がいる。

彼らSAPEURの姿は、首都ブラザビルでも、かなり際立っています。

これはその写真集。

仕事は持っていますが、そんなに裕福ではない彼らの"おしゃれ"は、自身の"生き方"です。

 

全面自供  赤瀬川原平(1937~2014)

赤瀬川原平。前衛芸術家として派手に活躍し、小説を書けば芥川賞を取っちゃう天才。

私は、そう思っていました。

これは、友人でもある編集者、松田哲夫を相手にこれまでの自分を語ったもの。

そこには、これまでとは全然イメージの違う人物像が・・・

臆病、まじめな前衛、理屈好きでへそ曲がり、優柔不断だが楽天的。

読んでみないとわからない、"こんな感じ"の人だったんだ。

 

ゼロから始める都市型狩猟採集生活

         坂口恭平(1978~ )

子供の頃から、巣のような家を作りたいと思っていた坂口恭平は、いわゆる"路上生活者"と呼ばれている人たちに関心を持ちます。

そこで知った、彼らの"都市型狩猟採集生活"。

自分の頭で考え、独自の生活、仕事を作り出していく人たち。

作者は、人間どんな状態になっても生きていける、と実感します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究者

大学などはもちろん、フリーの立場でも、様々なものを研究している方がいらっしゃいます。

その研究対象に対する気持ちや調査方法は、それぞれ独自のものがあるようです。

 

チョンキンマンションのボスは知っている

      小川さやか(1978~ )

文化人類学が専門の小川さやか。

彼女は研究のため、東アフリカ、タンザニアで現地の商人に弟子入りし、実際に古着の売買をしたりと、アクティブ。

この本は、香港のチョンキンマンションに住むタンザニア人、カラマの生活を取材したものです。

チョンキンマンションは、店舗、居住スペースのある、多国籍な空間。

カラマは"ダメ男”とされているけれど、とても魅力的。彼らの商売、人生を楽しむ様子は、友人として同じ世界で生活した者にしか描けないものです。

 

カイミジンコに聞いたこと

      花井哲郎(1954~2007)

古生物学が専門で、カイミジンコの研究者でもあった花井哲郎。

大学で教鞭をとっていた彼が、日常生活での出来事や、学校教育について、自らの研究と照らし合わせながら考察します。

その独自な考え方には、うなずけるものが多かったです。

 

幻のアフリカ納豆を追え

      高野秀行(1966~ )

以前”イスラム飲酒紀行”を紹介したノンフィクション作家の高野秀行

今度は、”納豆”を求めて韓国、さらには西アフリカへと向かいます。

私たち日本人には身近な”納豆”という食材が、思いがけない国々で、想像もしなかった形で存在している。

彼の、未知の事を模索しながら追いかける姿勢は、まさに研究者。

かなり嗜好性の強い研究ですが、本書を読むと、その本気度に影響されて、”納豆”への見方も変わってきます。

 

 

 

      

 

 

 

 

 

 

生きもの

私たちはもちろん生きものですが、廻りにも植物から昆虫、動物、様々な生きものがいます。

そんな生きものたちと深く、浅くかかわりあいながら、私たちは暮らしています。

 

小さな生きものたちの不思議なくらし  

           甲斐信枝(1930~ )

作者は、絵本作家の甲斐伸枝。

雑草に興味をひかれる彼女は、時間をかけて観察し、それらを絵にしていきます。

私たちの知らない、雑草や小さな生きものたちの、美しくもたくましい姿が描き出されます。

 

ネコはどうしてわがままか  

          日高敏隆(1930~2009)

動物行動学者の日高敏隆が、様々な生きものの行動の理由をわかりやすく解説します。

鶯の"適応度"、オタマジャクシの"恐怖物質"、"自然の偉大なる発見"としか言えないヘビの体の構造などなど。

生きて子孫を残すために生物が身につけた、驚くべき特性のいろいろ。

 

カヨと私  内澤旬子(1967~ )

いつも知らない世界を、自分の体験を通じて教えてくれる内澤旬子

彼女は小豆島に移住し、家の周りの雑草を食べてもらうため、ヤギを飼います。

まっ白い美しいヤギの名前はカヨ。

動物をどう飼うのが正しいのか、すべて飼い主のエゴだと言いながら、愛さずにはいられないカヨとの暮らし。

彼女はかなり情の深い人だとは思いますが、ヤギの方もいろいろです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

編集者

編集の仕事を経て自分で本を作るようになった人は、視野が広く、興味のある事には独自の視点で切り込んでいく、面白い作家が多いように思います。

 

圏外編集者  都築響一(1956~ )

出版界に入ってからも独学で仕事を続けてきたフリーの編集者、都築響一

なぜかメディアが取り上げない、"ふつうの事"を体を動かし、様々な人に会って取材します。

その辺にいくらでもあって、誰も見向きもしないもの、でも見向いてみれば興味深いもの(具体的には是非本書をお読みください)。

それらは、今の日本の現実を考えさせます。

 

父の時代 私の時代  堀内誠一(1932~1987)

私には"anan"創刊時のアートディレクターの印象が強い堀内誠一

この本は、彼が仕事歴として書いたもの。

昭和の初め、図案家の父の仕事を見て育ち、生活のため14歳から働きます。

その後、出版関係の仕事に携わりながら、絵本の仕事も始めます。

戦前の父親の仕事現場の様子など、当時こんな世界があったのかと印象深かったです。

彼の仕事を通じて、戦後の出版界が上り坂であった頃の勢いが感じられます。

 

セゾン文化は何を夢見た  永江朗(1958~ )

 

80年代、西武美術館のミュージアムショップで働いていた永江朗

社長、堤清二西武百貨店が企業として美術、音楽、出版などの分野に及ぼした影響(セゾン系文化)とは何だったのか?

当時、堤のもとで働いていた人たち、そして堤本人への取材を通じて考えて行きます。

私はリアルタイムで東京のセゾン文化を体験出来なかったので、残念ですが、その空気を吸って育った人たちが、その後の文化の作り手となっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都

若い頃は、なんか苦手でした京都。

でもここ10年で、いくつかのおもしろい事に出合って、今は京都を楽しんでいます。

 

京都ぎらい  井上章一(1955~ )

"京都ぎらい"とおっしゃる井上章一は、京都府出身。

けれど京都洛中の人にとって彼の生まれ育った京都市右京区は洛外で京都ではない?

千年の歴史を持つ京都の"いけず"が著者の体験を通じて語られます。

お互い、そんなに意識しなくても、と思いますが・・・

"京都"だからこそ、ここまでの近親憎悪?を持つんでしょうね。

 

京都の中華  姜尚美(1974~ )

昨年、京都の知り合いが連れて行ってくれた"中華"が美味しくて感激。でもそれは、今まで食べてきた"中華"とは違っていました。

そのお店も紹介しているこの本。

"京都の中華"は、京都人の好みに合わせ、食材、調味料、調理法を工夫した、他の街

の"中華"とは違う、独自の料理。その味は、おだやかでやさしい。

京都へ行ったら、是非"京都の中華"を味わってください。

 

琵琶湖疎水  織田直文(1952~ )

明治23年(1890年)、琵琶湖から京都鴨川へ引かれた運河、琵琶湖疎水。

その史跡は、南禅寺水路閣哲学の道、蹴上インクラインなど、今では京都の名所として多くの観光客を集めています。

事実上の東京遷都で沈んだ京都の起爆剤、として神話化されがちな"琵琶湖疎水"の事業。

ですがこの本は、当時の様子をかなり客観視して解説してくれます。

巨大プロジェクトは、時間が経過した後にこそ、しっかりとその役割と成果を判断していくことが、今後の社会を考える上にも必要だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事

世の中には様々な仕事があります。

個人の才覚はもちろんですが、その時代によっても大きく影響をうける仕事。

労働であると同時に、その人の生き方でもあると思います。

 

銀座界隈ドキドキの日々  和田誠(1936~2019)

イラストレーターの和田誠が大学卒業後就職したデザイン会社、ライト・パブリシティーでの思い出を語ります。
1959年からのほぼ10年、銀座にあったこの会社でデザイナーとして仕事をしながらも、趣味の映画、ジャズ、作曲などにも活躍の場を広げた多忙な日々。

日本のデザインは、専門家まかせの、のんびりしたものでしたが、"広告"が儲かる仕事になり、企業からの圧力が強くなり、競争も激しくなります。

そんな中でも、驚くほどの才能ある人たちとの交友が広がっていきます。

 

「ガロ」編集長  長井勝一(1921~1996)

伝説の漫画雑誌"ガロ"は、多くの個性的な漫画家を輩出しました。

出版社の創業者で、編集長でもあった長井勝一

"ガロ"は、新人には場を提供し育ってくれることを考え、ベテランには他では描けないことを描ける場であろうとしました。

その文章からも、人を大切に考える彼の人柄が感じられます。

 

ぼくは猟師になった  千松信也(1974~ )

狩猟は"自分の食べる肉は自分で責任をもって調理する"という生活の一部のごく自然な営み、だと言う著者。

京都の運送会社で働きながら狩猟をする現代の猟師。

この本は2008年に出ましたが、15年が経ち、獣害の増加がさらに社会問題となっている今、人間と野生動物との関係は、私たちにも身近な問題になりつつあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日々の食卓

毎日の食事を、季節の食材で楽しんだり、時には手間をかけたり。

いろんな場所の様々な料理があることでしょう。

 

おばあちゃんの台所修行  阿部なを(1911~1996)

昭和50年代、テレビの料理番組でのキリッとした着物姿が忘れられない料理研究家、阿部なを。

タイトルは"台所修行"と大袈裟ですが、当時70代の著者が故郷青森での子供の頃の思い出や日常の"食"に関するあれこれを細かく語っています。

郷土料理の店の"おかみ"でもあった彼女。

手間を楽しみながら暮らしたという、ちょっと昔の生活から私たちが学べる事は沢山ありそうです。

 

食べごしらえおままごと  石牟礼美智子(1927~2018)

食をめぐる、作家石牟礼道子のエッセイ集。

昭和2年生まれの彼女。子供の頃の正月や七夕などの年中行事、田植えなどで親戚や地域の人たちが集まる際に母親たちが作っていた料理の思い出。

"食べる"ということの意味が今とは違う時代。当時の人たちの、食べごしらえをする生き生きとした仕事ぶりが描かれます。

私たちの世代にはもうない、その力強さが印象に残ります。

 

自由が丘3丁目 白山米店のやさしいごはん

           白山米店のお母さん

東京自由が丘のお米屋さんで、お弁当も作って売ってるお母さんが、家族のために作った季節ごとの料理集。

以前紹介したミシマ社が出している、手作り感たっぷりの一冊です。

家族のことを考えて作る、やさしい家庭の味。