近代フランス史のこぼれ話、南仏に移住したイギリス人、ちょっと変わった小説。
馬車が買いたい! 鹿島茂(1949~ )
近代フランスの歴史をいつもおもしろく読ませてくれる、フランス文学者、鹿島茂。
この本は彼の処女作。
19世紀のフランス文学。バルザック、フロベール、スタンダールらの作品に出てくる、上昇志向の強い登場人物たち。
パリでの成功を目指す彼らが、最終的に欲しかったのは、"馬車"だった。
当時の住居、衣服、食生活事情を踏まえて考える、ステイタスとしての"馬車"の意味。
日常生活の細部の意味がわかれば、近代フランス文学は、さらに面白くなります。
ピーター・メイル(1939~2018)
80年代、忙しい広告会社の仕事を辞め、大好きなフランス、プロヴァンス地方に移住したイギリス人、ピーター・メイル。
彼は、ユーモアたっぷりの文章で愛すべきプロヴァンスの人たちを描きます。
この本は、出版当時、かなり話題になりました。
実際にそこで暮らしてみて、初めて分かる、その土地の気候、風土そして住民たち。
慣れない事もあるけれど、彼にとっては、何にも代えがたく、すばらしいプロヴァンスの日々。
ぼくのともだち エマニュエル・ボーヴ(1898~1945)
1920年代にフランスで発表された本書。
主人公ヴィクトールは、妄想癖があり、自意識過剰な臆病者。
孤独を苦にする彼は、ともだち(自分に興味をもってくれる人)を切望します。
結局は、自分のバカげた行動でともだちづくりに失敗。
そんなダメダメな姿にあきれながらも、どこか自分にも通じるものが・・・
不思議な読後感の作品。100年前のものですが、なんだか今っぽい気もします。