初めに上げた”秋の四重奏”を読んでから、イギリスの小説に興味をもち、ボツボツ読むようになりました。独特の階級意識を持って、他人に厳しい目を向けるイギリス人。そんな皮肉いっぱいの世界が、なぜかおもしろくて、やみつきになってます。
秋の四重奏 バーバラ・ピム(1913~1980)
イギリス、70年代のロンドン。会社の同じ部署に勤める定年間近の4人の男女。
作者は、これといった事件もおこらない平凡な毎日を過ごす4人の心情を細かく描写していきます。
40代で初めて読んだ時も魅かれましたが、60歳目前の今は、さらにおもしろく感じます。どこかで、他人とちょっとずつ関わりながらも、それぞれに生きていく人たちの感じが、身に沁みます。
活字を追うことでしか得られない、登場人物たちの心の動きを知る楽しみが、この本にはあります。
やんごとなき読者 アラン・ベネット(1934~ )
とにかく邦題がうまい!
”知的でない”ことが、イギリスの上流階級では美徳のひとつ。
そんなイギリスで、もしエリザベス女王が読書にはまってしまったら・・・
70代後半の女王が、ふとしたことから本に夢中になり、すこしずつ変わっていきます。
イギリスならではの風刺いっぱいの作品。
眺めのいい部屋 E.M.フォースター(1879~1970)
ヴィクトリア朝後期のロンドンに生まれた作家、フォースター。
外国にいる時も、それぞれの階級の価値観でしか、ものごとを考えられないイギリス人たち。そのため起こる騒動を俯瞰する感じで描いた作品。
1986年にジェイムズ・アイヴォリー監督が撮った同名の映画は、原作にかなり忠実で楽しめます。すばらしい役者たち(あのマギー・スミス、ジュディ・ディンチ他)がクセのあるイギリス人を好演している、お勧めの映画です。