芋文庫

推し本

石井桃子

イギリスの児童文学を呼んでいて、訳者が違うと同じ作家でも感じが違うと思い、感心を持ち始めた石井桃子。彼女の訳文は、とにかくわかりやすい。子供の頃から、意識せずに彼女の訳本をたくさん読んでいるのですが、どんな人だったんだろう?との気持ちでエッセイから読んでみました。

 

家と庭と犬と猫  石井桃子(1907~2008)

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石井桃子の死後、生前に雑誌などで発表したものを集めたエッセイ集。

子供の頃の思い出、戦後の農業体験など、マイペースだけれどピシッと筋の通った石井桃子の見識。エッセイを読むと、作者のちょっとプライベートな部分に触れた気になります。

 

幻の朱い実 上・下  石井桃子(1907~2008)

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石井桃子のエッセイの中に、"死んだ友だちからもらった家"という言葉が何度か出てきて、なんとなく気になっていました。その"友だち"と自分をモデルに書いたのが、この作品。

中に何通も出てくる友だち(蕗子)の手紙がとてもいいんです。毒舌だけどユーモアたっぷりで歯切れのいい文章。これらの手紙を物語の中に出来る限り埋め込むために80代の石井桃子は10年がかりでこの作品を書いたそうです。

 

ひみつの王国 評伝石井桃子  尾崎真理子(1959~   )

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「幻の朱い実」を読んで、石井桃子ってこういう小説も書くんだ、とちょっと驚き、もう少し彼女のことを知りたい、とたどり着いたのが、この本。

石井桃子の101年の人生を、その時々の社会情勢をふまえながら解説してくれます。訳者としてだけでなく、編集者として戦後日本の児童文学にはたした彼女の仕事の数々。60代以降も「幼ものがたり」「幻の朱い実」「今からでは遅すぎる」など、時間をかけた作品を発表しています。とにかくすごい人。